古くて新しい川根茶のキーワード川根みる芽伝統蒸し

川根茶のなかでも、とりわけ川根茶らしさを鮮明にし、
象徴となるようなリーディングティー。
地域では、その特徴から「川根みる芽伝統蒸し」と呼ぶ人がいます。
近年、この名称や存在を広く伝えようという気運が高まり、ブランド化に向けた認定基準づくりも進んでいます。
「川根みる芽伝統蒸し」って何? 他の川根茶と、どう違うの? 
簡単にご案内させていただきます

まず、みる芽とは――
  • 「若い」「未熟」といった意味をもつ静岡の方言、「みるい」。
  • それを語源とする「みる芽」とは、新茶期に芽吹く新芽のなかでも、特に若く柔らかい芽のことを指します。※
  • さらに川根地域では、シーズンスタートから間もなくの「一芯二葉」・「一芯三葉」の新芽を、「みる芽」と定義づけています。
  • お茶づくりの用語で、三葉期~四葉期と言います。
みる芽の、魅力とは――
  • 若くて柔らかい分、「みる芽」は香りも味わいもみずみずしいと、どんな産地でも言われています。
  • とりわけ川根茶のそれは、「みる芽香」と言われる鼻に抜ける爽やかな香りが強いと、古来高い評価を得てきました。
  • 近年それが科学的分析によって、次のように明らかになっています。
    香気成分として、メチルジャスモネ―ト、フラネオール、バニリン、インドールが強く関与しており、「みる芽川根茶」特有のものである
  • さらに、うま味成分の「テアニン」をはじめとしたアミノ酸も豊富な川根茶の「みる芽」は、「甘み」や「コク」も強いという特色を備えています。

ただし、若く柔らかい分、「みる芽」はとてもデリケート。
茶摘み後の蒸し方によって、せっかくの香りや味が損なわれる場合があります。
そこで大事なのが、「伝統蒸し」。

伝統蒸しとは――
  • その名の通り、昔ながらの伝統的な、お茶の蒸し方。
  • 茶園で摘んだ新芽を、蒸しすぎないようにし、自然な香りや味を守っていきます。
  • そうした手法は「深蒸し」と区別するため「浅蒸し」と呼ばれますが、それと川根地域の「伝統蒸し」は、厳密にはちょっと違う――
  • 「深蒸し」が広まるはるか昔、江戸末期から昭和40年代頃まで、煎茶の蒸し方は地域を問わず「浅蒸し」が中心でした。
  • しかし大正時代、川根の茶師はこう見抜きます。
    <水分が多く柔らかい川根茶は、蒸し過ぎない方が香りも味も生きる>
  • 川根茶は、寒暖差の激しさや、新芽を守る山霧の発生など、山あいならではの気象条件や地域の自然環境を活かす人々の心と技により、古来繊細にして香り高い新芽を育んできました。

  • おのずと一般的な「浅蒸し」とは異なる、川根茶の新芽に適した蒸し方が、さらに「揉みながら乾燥させる」工程でも「熱しすぎず、揉みすぎない」手法が考案されてきました。
  • 手揉み製茶の時代から今日の機械製茶にも受け継がれる、こうした工程を、川根地域では「伝統蒸し」と呼んでいます。

川根地域が定義づける「みる芽」だけを摘んで
「伝統蒸し」をはじめとした川根流の製茶方法で自然な香り、味を守り抜く。
それが「川根みる芽伝統蒸し」です。

さらに、こんな基準やルールを定める話し合いが、地域で進んでいます。
  • 有機物などを活かし、土作りに心をかけている茶園の新芽に限定しよう。
  • 茶農家には、栽培履歴などのチェックリストの記入・提出を義務づけよう。
  • 指導機関の巡回調査を導入し、栽培状況をチェックしたり、茶園ごとの最適な茶摘みタイミングを厳格に設定しよう。
  • 「全窒素」「遊離アミノ酸」「繊維」の成分チェックや、香りの官能検査を行い、合格した川根茶だけを「川根みる芽伝統蒸し」と認定して出荷・販売できるようにしよう。

「川根みる芽伝統蒸し」の正式なブランド化は、
まだこれからですが、
それに適合する川根茶は、昔から、毎年、栽培・製茶・販売されています。
ぜひ、本サイトに掲載された茶農家や茶専門店に
問い合わせてみてください。